ミッチェル・サントナー:一国を沈黙させる準備ができた“フラットライン”のキャプテン、T20ワールドカップ決勝へ
現時点でナレンドラ・モディ・スタジアムのスコアカードだけを見ているなら、このT20ワールドカップ決勝は予定調和のシナリオ通りに進んでいると感じるかもしれない。10万人以上が詰めかけた超満員の観衆が青く染まり、インドのオープナー、アビシェク・シャルマとサンジュ・サムソンが、まるでネット練習かのようにニュージーランドの攻撃陣を打ち砕いている。しかし、この1ヶ月間ブラックキャップスを追いかけてきた人なら分かるはずだ。フィールドで采配を振るうあの男は、この騒然とした雰囲気にまったく動じていない。全くもって、だ。
“フラットライン”と呼ばれる男
ミッチェル・サントナーは、決して慌てない。チームメイトは彼を「フラットライン」と呼ぶ。なぜなら、前のオーバーで14点差を守りきる場面でも、あるいは innings が崩壊しかけた状況で打席に立つ時でも、彼の心拍数は常に平静を保っているように見えるからだ。その落ち着きこそが、彼がこの大会にもたらしているエネルギーである。世界中のクリケット関係者がインドの強力な打線や、バルン・チャクラバシーのミステリースピンに注目する中、サントナーは静かに、ニュージーランドが究極の番狂わせを起こす準備を整えるトーナメント戦を演出してきた。
決勝を前に、13万人もの観客が彼の敗北を願っていることについて問われた時、彼はよくある外交辞令のような決まり文句は述べなかった。彼は率直に認めたのだ。「目標は、観客を黙らせることだ」と。そして2023年を振り返り、パット・カミンズがまさにこのグラウンドでのODIワールドカップ決勝で、インドに対して同じことを成し遂げたではないかと皆に思い出させた。それは傲慢さからではなく、ミッションを宣言するニュージーランド流のやり方なのだ。
トスを制し、夢の追走へ
サントナーはトスを制し、追う側(先攻)を選択した。アーメダバードのような広大なグラウンドでは、特に過剰な期待に押しつぶされそうなチームに対して、追う側に回ることは心理的な武器となり得る。「追いつける範囲に得点を抑えたい」と、彼は嵐の前の静けさを思わせるような落ち着いた口調で語った。しかし、このインドチームを抑え込むことは、言うは易く行うは難しだ。先ほど目の当たりにしたパワープレーは凄まじく、インドはT20ワールドカップの全試合を通じて最高となる92ランを奪った。
ここでサントナーのキャプテンシーの手練手管が生きてくる。彼は、もはやこのようなラインナップを単に「封じ込める」ことは不可能だと理解している。試合前にも彼が言及していたように、「どんなチームでもペースを落とす唯一の方法は、トップでのウィケット獲得だ」。彼は突破口、つまり早期のウィケットを必要としている。今すぐに、中盤のオーバーでプレッシャーをかけるために。
ニコラス・プーランという要素(彼はここにいないけれど)
なぜロングテールキーワードであるニコラス・プーラン vs. ミッチェル・サントナーがトレンドに上がり続けるのか不思議に思うかもしれない。プーランはこの決勝戦にはいない(西インド諸島は大会で苦戦した)が、この対戦カードはサントナーの価値を象徴している。サントナーは、相手の攻撃の流れを断ち切るスペルの達人だ。プーランのような強烈な左打者が打ちまくろうとしている時に起用されるのが彼である。中盤のオーバーで、サントナーは単にドットボールを投げ込むだけでなく、相手の innings から生命感を奪い去ってしまう。準決勝の南アフリカ戦で、そのお手本を示した。もし彼が、スリャクマール・ヤダブやハーディク・パンディヤに対しても同様の締め付けを再現できれば、ニュージーランドはこの試合を最終盤までもつれ込ませることができるだろう。
リーダーの資質
戦術面だけでなく、サントナーを特別な存在にしているのは、チームメイトが彼をどのように語るかだ。若手のラチン・ラビンドラは、スリランカに勝利して決勝トーナメント進出を決めた後の重要な試合後に、こう言い表している。「ミッチェル・サントナーみたいなキャプテンがいると、自分が身長3メートルくらいに大きくて、まるで弾丸も効かないような気分にさせてくれるんです」。リーダーがサントナーほど冷静だと、その姿勢はチーム全体に浸透する。前の試合でマット・ヘンリーが新しいボールで即座にウィケットを奪ったり、ロッキー・ファーガソンがフラットな pitch で力強くボールを投げ込んだりするのも、すべては「自分たちのやることをやるだけさ」という信念に共鳴しているからだ。
そう、インドが圧倒的有利だ。そう、彼らはT20の王座を守った初めてのチーム、そして母国で優勝した初めてのチームになろうとしている。しかし、歴史とは面白いものだ。ニュージーランドはT20ワールドカップでインドに敗れたことがない。そして彼らには、無表情のオーバーを一つずつ積み重ねながら、ゲームの流れを塗り替えようとしているキャプテンがいる。
彼らがトロフィーを掲げるかどうかにかかわらず、ミッチェル・サントナーがフィールド中央でこのディフェンディング(守備)の攻防を指揮する様は、この決勝戦を決定づけるチェスの一局のような見応えのあるものになるだろう。観衆は騒然としているが、「フラットライン」は耳を貸さない。
- Key Battle: サントナーの左腕オーソドックススピン vs. 右打者の多いインド middle order。
- The Record: サントナーはT20Iで驚異的なエコノミーレートを誇り、400オーバー以上投球した投手の中では歴代最高クラスに位置する。
- The Quote: 「一度でいいからトロフィーを掲げるために、何人かの心を(ファンの期待を)壊しても構わない。」- ミッチェル・サントナー